FPSゲームを本気でプレイしている人にとって、非常に重要なガジェットの一つであるイヤホン。
目には見えずとも銃声や足音が聞こえる方角を頼りに敵の位置を感じ取り、その方向へ狙いを付けておくことを俗に「耳エイム」と呼んだりもします。
そのためパズルゲームやRPGなど対戦要素が薄い作品であるならばともかく、バチバチに対戦要素が絡んでくるFPSや格ゲーなどをプレイするのであれば、100円~1000円程度の安価なイヤホン・ヘッドホンではなく音響周りにある程度こだわるべきと言えるでしょう。
筆者もFPSゲーマーかつ軽度のオーディオオタクなので、音響周りはこだわって選んだものを使用しています。
そんな中で、筆者が「何も考えずまずこれ買っとけ」と言えるおすすめのイヤホンが「SHURE SE215 Special Edition」。
筆者は高校生時代におすすめのイヤホンとして紹介されていたのを購入して以来、癖のない音質と音楽鑑賞・ゲームプレイの両方に使える器用さから長く愛用しており、6~7年使って最近ダメになってしまったために二代目を購入した程度には信頼を置くイヤホンです。
今回はその二代目をレビューしていきます。
(なお、SE215はノーマルの「SE215」と、それとは違うチューニングが施された「SE215 Special Edition」が存在しますが、今回の記事では基本的に「SE215」と書かれている場合は「SE215 Special Edition」の事を指しています。)
はじめに ~メーカー紹介~
「AppleのAirPodsとかソニーとかはなんとなく聞いたことあるけど、Shureってメーカーは初めて聞いた」という方も多いのではないでしょうか。
Shureは、アメリカに本社を置く世界的に有名な音響機器メーカーで、革新的なオーディオソリューションを提供する企業です。
Shureの製品ラインナップには、マイクロホン、イヤホン、ヘッドホン、無線システムなどが含まれており、アーティスト、プロフェッショナルオーディオエンジニア、ライブイベントプロデューサーなど、さまざまな分野で広く愛用されています。
同社の製品は高い音質、堅牢性、優れた性能に焦点を当て、ライブパフォーマンス、録音スタジオ、放送、ビジネスミーティングなど、さまざまな状況で活躍しています。
使いやすさと高い品質に注力している彼らの製品は、音の表現力を最大限に引き出すためのパートナーとして、アーティストやプロフェッショナルに信頼されているのです。
また1万円以上の中堅イヤホン、数万円から数十万円以上するような高級イヤホンの中には「コードを耳の上に通す」独特な掛けかたをするものもありますが、これは俗に「シュア掛け」と呼ばれ、その名の通りShureのイヤホンがそのような掛けかたをすることから広まっていったとされています。
音響メーカーの中でも80年以上の歴史を持つ老舗メーカーであり、今回紹介するSE215も約12年ほどの歴史を持つイヤホンです。
製品紹介
「SHURE SE215 『Special Edition』」と名が付いている通り、この製品にはバリエーションとして普通の「SE215」も存在します。
では何が違うかと言うと、ノーマルのSE215が低音から高音までフラットな音質となっているのに対し、Special Editionはやや低音がブーストされた音質になっています。
このため、音楽はノーマルのSE215と比較すると相対的にドンシャリ気味(低音と高音がちょっとだけ強く聞こえる)になって楽しく聴くことができるとともに、FPSにおいては足音を聞き取りやすいイヤホンになっています。この点がゲームプレイにおいての強みです。
SE215はイヤホン本体、ケーブル、シリコンイヤーピースとウレタンフォームイヤーピースがS/M/Lの3種類(ウレタンイヤーピースのMが最初から装着済み)、メンテナンスツールと布製イヤホンポーチが付属しています。
何気にありがたいのがイヤホンポーチで、布製とは言えど硬めの素材であるためバッグに放り込んで持ち運んでもそうそうダメになることはありません。イヤホンのおまけにしては相当上質なレベルに入ります。
音質は上でも軽く紹介したとおり、やや低音がブーストされたフラット型。リスニングイヤホンと比較するとどうしても大人しめの味付けですが、個人的には丁度良い感じです。重低音マシマシが好みと言いう方にこそ向いてはいませんが、万人受けするイヤホンだと思います。
ゲーマーとしては、FPSにおいて重要な要素である足音の帯域が聞き取りやすいチューニングです。
再生周波数帯域は21Hz~17.5kHz。低音から高音まで幅広く、またバランスよくカバーしており、上記の音質と合わせて聴いていても疲れにくいイヤホンとなっています。
直接的なイヤホンの性能からは離れますが、ウレタンイヤーピースを使用した場合最大37dBの騒音をカットできると公式ホームページには記載されています。
なお分かりやすい例で言うと約80dBが地下鉄の車内、約40dBが図書館の館内に相当するそうです。さらに音楽を流すことで騒音がマスキングされるため、多くの場所で音楽に集中できるレベルの騒音カット性能を発揮してくれます。
豊富なカスタム幅
SE215は「MMCXコネクタ」という機構を採用しています。普通のイヤホン、安価なイヤホンは耳に入れて音を出す部分(ハウジング)とケーブルが一体化していることが多いですが、SE215の場合はケーブルを取り外すことが可能であるとともに、MMCXに対応しているケーブルであれば自由に付け替えることができます。
ケーブルが断線してしまったとしてもハウジング部分が無事ならケーブルを取り換えて問題なく使い続ける事が可能であるとともに、ケーブルを好きな物に交換することで音の違いを楽しむことが可能です。
かくいう私も、付属の3.5mmステレオケーブルから4.4mmバランスケーブルに付け替えて音楽やゲームを楽しんでいます。(別途4.4mm端子に対応するオーディオ機器が必要です)
また付属しているシリコン製・ウレタン製イヤーピースのほかにも、対応している製品であれば自由にイヤーピースを付け替える事が可能です。
イヤーピースでも音は変わるため自分に合った音や装着感を楽しむもよし、「夏は蒸れやすいからお手入れしやすいシリコン、冬は寒いので耳にフィットするウレタン」という風に機能性で選ぶもよし。ほどほどの価格帯で自分の好きな様にカスタムができるのもSE215の良い部分です。
プロも愛用する理由
有名どころでは「ZETA DIVISION」のLaz選手、「VARREL」のxnfri選手など、FPSのプロゲーマーもこのSE215を使用していることで有名です。
その理由は「圧倒的な遮音性・フィット感」と「価格に見合わない定位の良さ」であると使用していて感じます。
SE215は正確にはイヤホンの中でも「イヤーモニター」と呼ばれるジャンルの製品であり、アーティストがステージ上で演奏する際にも用いられるものです。
そのため様々な音が鳴り響くステージ上でもアーティストが自分の演奏や音楽を聞き分けられるように、音質だけでなく遮音性や耐久性も重視されているのです。
また純正のイヤーピースは柔らかいウレタンフォームでできており、また軽量なため長時間付けていても耳に痛みが出る事はほとんどありません。
そのイヤーピースのおかげで非常に耳にフィットするため、耳栓のような遮音性を持っているとともに長時間装着していても気にならない快適性があります。
単純な音質や定位という面ではヘッドホンに軍配が上がりますが、ヘッドホンは重くて頭頂部に負担が掛かったり、側圧(=耳を挟み込む力の事)が強かったりで頭痛を起こしやすくもあるため、朝から晩までゲームをプレイするようなヘビーゲーマーにとってはその部分が無視できないデメリットと言えるでしょう。
プロゲーマーもオフライン大会では、イヤホンの上にさらに装着するヘッドホンから流れるホワイトノイズに負けないようにゲーム音を聞き取って状況を分析する必要があります。
また大会では1試合が数時間にわたって行われることも珍しくありません。そのため、遮音性やフィット感が良いSE215を使用していると考えられます。
さらに約1万円台というイヤホンの中ではリーズナブルな価格帯に対し、定位がしっかりしていることもプロが使用している理由の一つだと思います。
「定位」(定位感とも)は「『イヤホンから流れる音がどの方向から聞こえるか』の分かりやすさ」を示す言葉であり、例えば右斜め前や左後ろなどといった音の方向を聞き取りやすければ定位が良いとされます。
SE215はイヤーモニターであることから、リスニング(音楽を楽しく聴く)よりはその名の通りモニター(音楽が破綻していないか、分析的に聴く)向けの用途としてよく使われます。そのため、楽器やボーカルがどの方向から聞こえるか分かりやすいような定位となっています。
その定位の良さはそのままゲームをする際のメリットとなり、足音や銃声がどの方角から鳴っているかを聞き分ける時の武器となるのです。
まとめ
SE215は音楽鑑賞用にもゲーミング用途にも使える器用さを持ち、さらに価格帯の割に長く使えるためコストパフォーマンスは破格と言っていいでしょう。
聴き疲れを起こしにくく、また飽きの来ない音質であるためちょっと背伸びしたいオーディオ初心者から安くて良いイヤホンを漁る探求者まで、またゲーマーにとってもおすすめできる万能の一本です。
セールで安くなることも多いため、ビビッと来た方はぜひ買ってみてはいかがでしょうか。
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